だからセミナー講師はやめられない!
Impression・ラボ座談会 vol.4
平林亮子氏:合同会社アールパートナーズ、平林公認会計士事務所 代表 公認会計士金子智朗氏:ブライトワイズコンサルティング合同会社 代表社員、公認会計士 税理士畑下 裕雄氏  株式会社プロキューブジャパン 代表取締役 公認会計士 税理士 公認内部監査人吉成英紀氏:(有)吉成コンサルティング代表取締役、コンサルタント
セミナーで鍛えられること
畑下
「鍛える場所」というのは、私もすごく感じます。教えることによって、また質問を受けることによって「なるほど、そういうことが気になるんだ」と教えられることが非常に多いです。
金子
講師という仕事は、確かに本当に鍛えられますよね。
畑下
自分が言ったことに対してぜんぜん反応がなければ、じゃあ違う言い方をしなきゃいけないと考えますので、常に思考が固まらず柔軟にいられますから、私としてはすごく有り難い。
吉成 
私も「伝える」ということには、非常にこだわりますね。しゃべって聞こえるではダメで、どうしたら伝わるのかということは、ずっと問い続けています。私が講師の仕事を続けている大きな理由の一つは、まさに「伝える」ということの中に「鍛えられる」という側面があるからなんです。
金子
すべてがライブですからね。それこそ衆人監視のもとで、思いもよらない質問もされるわけです。そのときに沈黙したら終わりですから、ものすごく頭が回転して、何もなかったかのようにサラリと答える。これは鍛えられますよ。
平林
セミナー講師をしていると、「分かりません」とはあまり言えないですものね。もちろん分からないこともありますが、そういうときは「根本的にはこういうふうな考え方をするんじゃないでしょうか」とか、とにかくなんとかして対応しようと考えます(笑)。
金子
そう。その場で、その瞬間に最大限の良い答えをするテクニックは、ライブで常にやっていないと身に付かないです。だからセミナーはライブなんですよ。私は講師の仕事の前日は、よく「明日はライブだ」と言っています(笑)。
感動させる工夫
金子
実は、私の最近のライブでは、「感動させる」ということをテーマにしているんです。私たちが扱う会計というテーマで良い評価をもらうときというのは、普通は「分かりやすい」ということじゃないですか。でも、キャリアや人生論をテーマとする先生は、オーディエンスを泣かしちゃったりするわけですよ。そういうのを見聞きして、自分も「分かりやすい」を超えて、「感動した」と言ってもらえるような研修をやりたいと思い始めたんです。会計で泣かせるまで感動というのは難しいですけど、何年か前に、アンケートに初めて「感動しました」と書いてくれた人がいたんです。その「感動」という言葉を見たとき、私自身も感動しちゃいました。それ以来、時々ですけど、「感動しました」って書いてくれる人がいますが、嬉しい限りですね。
畑下
感動する会計講座ってどうやってやるんですか。
金子

それは企業秘密です(笑)。

平林 
その秘密をちょっとだけ聞かせてください(笑)。
金子
ではちらっとお話をしますと(笑)、会計の話でありながら、そこから抽出できる人生観とかメッセージみたいなものを話したりしてます。学生なら学生、会社の人なら会社の人というように、そのとき聞いてくれているオーディエンスの心に響くような仕事のあり方だとか人生のあり方、キャリアに対する考え方といったことをちょっと入れるんです。たとえばこの前、慶應大学で学生に講義をしたときは、「学問のすゝめ」の“本当の内容”の話をしました。「学問のすゝめ」というと、「天は人の上に人を作らず人の下に人を作らず」というのが有名ですが、実はその後に続く部分が福沢諭吉が本当に言いたかったことなんですよね。それを引用しながら、「なぜ勉強しなければならないのか」という話をしました。
平林 

それは食い付いてきますよね。

金子 

一瞬で学生たちの目の色が変わりましたね。

ダメなタイプの講師とは
平林

では逆に、こんな講師はよくないな、こんな教え方はよくないなと思うことはありますか。

金子

私が思うダメなタイプは、オーディエンスを見ていないタイプです。自分が考えていたプログラムを淡々とやるだけでフレキシビリティがないというか、相手を見て反応を伺いながらアレンジできない人はダメだと思いますね。

吉成 

私も、聞く人に伝えるということをまったく考えていなくて、単に専門的なことを、時間の中で自分がしゃべればいいと思っている人は良くないと思います。あと自分の失敗談としては、私がいちばんよくやるのが暴走です(笑)。相手がついてきていない。伝わっている何人かとは目があっているものだから、それでずっとしゃべっていて、実は6割ぐらいの人がついてこれていなかったというのはやってしまいがちです(笑)。

平林

私も本当に失敗したなと思ったことがありました。受講者から明らかに誤った答えが返ってきたときに、時間に追われていたこともあって、「それはちょっと違いますね」とはっきりみんなの前で言っちゃったことがあるんです。そうしたらその方は、それは5回のコースだったんですけど、そのときの3回目までしか来なくて。

吉成

あー、それは仕事が忙しかったんですよ。

平林 

そうかもしれないですけど、やっぱりしてはいけないことだったなと、すごく反省しました。いつもなら「着眼点はいいですね」とか、次につながる対応をしていたのに・・・。

金子

相手にもよりますよね。大学院のビジネススクールの場合は、違うことは「違う」と言って欲しいと学生に言われますよ。

吉成

僕の場合、変な答えが返ってきたときは、「えー」と笑ってごまかします。あとは「残念!」とか、ちょっとギャグをまぶすといいかもしれないですね。

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畑下 裕雄氏  株式会社プロキューブジャパン 代表取締役 公認会計士 税理士 公認内部監査人
吉成 英紀〈ゲスト講師〉(有)吉成コンサルティング代表取締役、コンサルタント。慶應義塾大学商学部卒。大手監査法人にて、不良債権に伴う債権査定業務、外資系銀行監査および、コンサルティング業務に従事する。「経理実務」「数字の読み方」(大栄出版)他共著多数。
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