「イノベーションを導き出す」企業内研修
Impression・ラボ座談会 vol.1 2010年6月14日(月)午後
吉成英紀氏:(有)吉成コンサルティング代表取締役、コンサルタント金子智朗氏:ブライトワイズコンサルティング合同会社 代表社員、公認会計士 税理士平林亮子氏:平林公認会計士事務所 代表 公認会計士河合太介氏:人と組織のマネジメント研究所 (株)道(TAO) 代表取締役社長
外部講師の存在意義
河合
今まで一度だけ、人事担当者から「答えは作らないでください」と言われたことがあります。あるメーカーの管理職対象の研修だったんですが、「管理職の悩み」というテーマでいろいろな事例と解決の仕方をインタビューしたんです。それで担当者に、解決策のビデオは作りますか? と聞いたところ、「作らないでください」と言うんです。
金子
ほう。
河合
なぜなら、それはその人の状況のソリューションだから、それを出してそうすればいいんだと思われると、それは間違いになるということなんです。管理職になるといろいろ悩まなきゃいけなくなるんだというもやもや感を持って帰ってもらうのが、この研修のソリューションなんですと言って、僕はこの会社はすごいなと思いました。
金子
その担当者がすごいですね。でも答えを与えちゃいけないというのは、本当にそうですよ。答えというのは既成概念における答えですから、それを与えると、イノベーションを阻害してしまいます。
吉成 
同感ですね。これからの企業を考えると、新しい時代の付加価値を生み出さなければいけない。そして付加価値を生み出すのは人ですから、我々はそのイノベーションを導き出すような研修を提供していかなければいけないと思います。それは答えを与える教え方ではなくて、これまでの経験則にはないことを考えさせるということですよね。学校ではそんな教育はしない、おそらく企業もどうしていいのか分らないのでしょう。だからこそ我々の存在意義があるのだと思います。
学びには”遊び心”が大事
吉成
アメリカは大学に入ってから勉強をしますよね。二十歳ぐらいからすごく伸びる。私は自分の意見を発信できるのは、大人になってからしっかり勉強をした人だと思っていますが、みなさんは「大人の学び」とは何だと思いますか。
平林
私は、物事を見るための切り口として学びがあると思っています。企業の一社員として知識を吸収したり、法制度や仕組みを勉強することは重要ですが、自分が興味のあることを体験するのも学びだと思うんです。私は、ボイストレーニングをしたり、ジムで身体を鍛えたりしていますが、仕事に直接関係のないことの中にもヒントがあるんです。自分が楽しいと感じることを、もっと自由に学べばいいと思うんですよね。
河合 
私も同じように感じていて、私はそれを「脱線」と言っています(笑)。たとえば目的地に直接行かず、あえて裏道を歩いたり、調べ物で辞書を引く時も、目的の用語以外に「脱線」することで新たな発見があったりします。先日も、テレビの「天才!志村どうぶつ園」に出ているチンパンジーのパンくんを見て、「これは研修に使える」と思いました(笑)。
金子 
私は、いま注目されている国なので言葉を知りたい、という単純な動機から中国語を勉強しています。あと、体を動かすのが好きなので、合気道も8年続けています。体を動かすのも脳の働きですから、脳をバランスよく働かせるためには、知能だけではなく体を動かすことも重要だと思うんです。好きなことをしているだけと言ってしまえば、それまでですが (笑)。
河合 
遊び心のある学びが大事ですよね。たとえば、日本企業のどこかの社員が「iPad」を提案したとしても、ことごとく却下されたと思いますよ。なぜなら、「iPad」の機能を満たしたものはもう存在しているから。既にあるものはいらない、という発想が邪魔をするんです。でも人は、本能的に遊び心を刺激するものを求めていますよね。
教育担当者へのメッセージ
吉成
最後に、研修担当者や人事教育担当者の方へのメッセージをいただけますか。
金子
人事に携わることは、トップに次ぐ官房長官クラス、野球であればヘッドコーチであるというくらいの自覚と問題意識をもってあたってほしいと思います。研修を依頼していただくときは、「決算書の読み方」とか「会計基準の国際化」のようにお題を最初から決め付けるのではなく、こんな悩みがある、こういう人を育成したいと言ってくれた方が、適切なプログラムを提案することができます。我々は、具体的な研修を提供するスキルに加えて、プログラムの企画に多くの考えやノウハウを持っていますので。
平林 
教育研修プログラムは、そう簡単にはできないということを理解いただいて、10年20年先を考えた後世に残る仕組みを作るぐらいの気持ちで取り組んで欲しいですよね。
河合 
その台本を作るところから一緒に参加させてもらいたいと思います。
吉成 
私もまったく同感です。日本企業の先々を見据えた研修を一緒に作っていきたいですね。日本の企業から優秀な人材が数多く誕生することを祈って座談会を終えたいと思います。どうもありがとうございました。
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企画、構成、演出/エデュケーションプランナー 藤山 晴久
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株式会社日本能率協会マネジメントセンター発行「人材育成」
9月号記事広告に抜粋記事掲載。

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